ALL　will　be　Happy ... 『幸福な食卓』　本のレビュー

05 | 2023/06 | 07
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プロフィール

IHURU
IHURU（♀）
三十路街道まっしぐら☆
2009年12月に女の子を出産しました♪
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『幸福な食卓』　本のレビュー

お気に入り度：★★★★
タイトルから明るめなお話かと思っていたら、見事などろどろ世界にはまりこみました。

幸福な朝食 (新潮文庫)

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乃南アサ
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タイトルだけ見て、明るめなお話かと図書館で借りてきたのですが、読み始める前に改めて表紙を見て（ハードカバー版）、あれ？と一呼吸。ふたを開けたら、見事にどろどろな女の世界でした。

幼い頃から友だちに恵まれていなかった主人公の志穂子。けれど、志穂子は特にそれを寂しいとも思っていませんでした。なぜなら、彼女には美少女ともてはやされるだけの美貌があったから。
志穂子は将来芸能界に入ると当然のごとく決めていたのですが、高校2年生の年、なんと彼女に瓜二つの女の子がデビューし、一躍人気アイドルとなってしまったのです。

それでも夢をみていた彼女は高校卒業後、上京。養成学校に通い始めるのでしたが・・・

そんな志穂子も今では30歳半ばになり、人形劇の人形遣いとして中堅クラスにおさまっています。
物語は今現在の彼女が主な語り手として、過去と現在をいったりきたりしながら進んでいきます。時に彼女の回りの人物が彼女をめぐってお話をつむいでいくのですが・・・

それにしても、30歳半ば。まさに今のわたしですが、このくらいの女性同士って、けっこう難しいんですよね。
結婚しているかしていないか、子どもがいるかいないか。たとえば未婚の友だちに久しぶりに会ったとき、昔のように気軽に「彼氏は～？」と聞けなかったり。たとえ既婚者でも、子どもの話はタブーの場合もあったり。
なんとなく決まっていく暗黙のルール。

志穂子の場合は親しい友だちがいないので、このルールが適用されず・・・
仕事仲間の何気ない、けれどとても無神経な言葉に容赦なくさらされていき、それをきっかけに、若い頃の苦い出来事が蘇ってきます。

叶わなかった夢。しかも自分にそっくりの女性は自分が思い描いていたとおりに、アイドルから女優へ成功をおさめていっている。
妬み、嫉み、諦念、孤独…長年蓄積されてきた複雑な思い。
そして若い頃のあの出来事。

志穂子の心は徐々に蝕まれていきます。

はぁー。怖かった。
何気に志穂子の気持ちがよく分かるだけに、次第に常軌を逸してくる彼女の様子がリアルに想像できて・・・
全然気持ちのいい話じゃないのに、ページをめくる手が止まりませんでした。

でも、一番、コワッと思ったのは、志穂子を慕っていた広美。20歳そこそこの田舎から出てきた彼女は純朴そうで、事実そうだったんだろうけれども・・・
絶対に手に入れたいと願う男が現れてからの彼女の計算高さは群を抜いていました。
ナチュラルな体当たりで男をおとし、悪巧みでその手を離さない。おお、コワッ。

読後感はいいものじゃありませんが、女のどろどろした一面の描き方は流石といわざるを得ない一冊です。